どんなに高く飛ぶ鳥よりも想像力の羽根は高く飛ぶ

自分の"楽しみ"を書いて、自分だけが救われるんなら、それは言葉ではないんじゃないの。言葉は人のものでもあるんだから。

好きでないと思ってたけど、やっぱ、好きだった、ごめん

 人の気持ちは外から見えない。相手が自分のことをどう思っているかなんて、ほとんどわからないことだ。そんなそぶりを見せても、そうでもないこともあるし、なにか理性で覆って本心を隠すことだってある。単に恥ずかしいってこともあるし、それが恋の場合、駆け引きをしているのかも。──ある男女の話。
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 きみはぼくのことなんて、なんとも思ってないと思ってたよ。ぜんぜんそんなこと気がつかなかった。でも、そうじゃなかったんだね。今になって気がつくなんて。
 いや、どうでもいい話じゃないよ。大事な話じゃん。きみがどう思ってるかなんて、ぼくにはわからなかったんだから。これはきみにとっても、ぼくにとってもとても大事なことだ。今、ぼくたちがどうにもならなかったとしても、このことは意味があることだよ。
 人の気持ちは外からはわからない。自分の気持ちだってわからない。無意識にしてしまってる行動だってあるし、それを押し隠そうとすることだってある。理性もあるし、感情もある。人と人との関係は本当に微妙なバランスで成り立ってるじゃん。ぼくたちは恋の話をしているんだから、余計にナイーブで、触ったら壊れてしまうような脆いものを扱っているのかも。
 きみは、きみの自分の気持ちに気がついてた? そう。ただのからかい上手ってわけじゃないみたいだね。ふーん。
 きみの気持ちを知ってしまった以上は、ぼくは普通ではいられないよ。きみはぼくの大事な人だけど、ぼくはぼくの気持ちだけでぼくの気持ちを判断できない。好かれてる人を好いてしまう気持ちって、あるでしょう? 先手を打った方が有利だよね、恋は……。
 ただ、好きでいさせてほしい、って言われてもなぁ……。無下にはできないよ、そんなの。ちょっかい出してくるでしょ? そりゃあ。きみの気持ちに応えないぼくは、どんどんみんなから悪者になってしまうし、気がついてしまった以上、何かをしないといけないんだよ。
 自分の気持ちにも、相手の気持ちにも、互いに気がついてなかったんだ、ぼくらは。自分の気持ちを何かに固定しなくてはいけないのって、つらいよね。好きな時もあるし、そうでもない時もあるじゃん。でもそれじゃあ、ニンゲンカンケイなんてうまくいかない。相手の気持ちもあることだし、二重に難しいね……。
 きみに嫌われてもつらくないよ。でも、きみが他の人のところへ行ってしまったら、寂しい。ってことでいいのかなぁ。
 まだ、答えでないよ。また来週、電話するよ。じゃあね。