この胸の高鳴りをきみに伝えたい
ぼくとあなたで感じたであろう、あの状況、あの、胸の高鳴り。でもそこにいたのはぼくだけ。処と時を別にして、あなたもそれを感じていたかもしれない。
その胸の高鳴りが、ドキドキが、嘘でないなら、ぼくたちは、うまくやっていけるのに。
そうしようとしないのは、
今まで通りに過ごそうとするのは、
何事もなかったかのように過ごすのは。
ぼくはきみの言葉を読み、きみはぼくの言葉を読んだ、はず。そこから了解したのは、単に情報だけでなく、ただ情緒だけでなく。もっと芳醇ななにかだったはずなのに。
焦りの色が、きみにも、ぼくにも、みえた。それなのに。
***
いつまでも進まないのは、
ぼく(たち)が怯えているから。まだ準備ができていないと、心で言い訳をしているから。良いわけを探しているから。
ぼく(たち)は傷つきたくないのだ。傷ものになりたくないのだ。自分が、自分だけが可愛いから。自分だけが大事だから。
あの焦燥は本物だったはず。でも、その上で、行動に移さないのにはきっと、訳がある。
このことが全てただの偶然だったとしたら。ぼくの思い違いだったとしたら。そういうことだって充分に在り得るだろう。空振りに終わるとしたら。
互いに欠けている決定打を、ぼくたちは欲してる。具体的な行動だけが、具体的な表現だけが、相手に伝わる。きちんと伝えるべきだ。伝わるだろうなんて、嘘だ。まがいだ。伝えなくてはならない。性別を超えて。どっちからでもなくて。ただ。
気持ちを。
わだかまりを。
焦燥を。
ドキドキを。この胸の高鳴ったことを。