どんなに高く飛ぶ鳥よりも想像力の羽根は高く飛ぶ

自分の"楽しみ"を書いて、自分だけが救われるんなら、それは言葉ではないんじゃないの。言葉は人のものでもあるんだから。

恋愛とは、(たぶん)素晴らしいものだ

 彼女は、そのとき、ぼくのことを理不尽だ、と思っていたかもしれない。いま思えば、だけれど。彼女がぼくから遠ざかろうとした途端に、ぼくは近づきたい、と思ったのだから。彼女は決して狙ってそうしたわけではないし、ぼくの方も全くの不可抗力というやつで、まぁ、とにかくぼくたちは結ばれたわけだった。10年以上経った今でも、その晩のことはよく覚えている。昨日のことのようにとはいかないけれど、まぁ、それなりに鮮明に。ぼくにも、彼女にも、初めての晩で、それは、とにかく刺激的だった。それは彼女の住んでたアパートで、そこはもうその時に、引っ越しを予定していた場所だった。
 彼女は、その晩から遡ることだいたい3年前からぼくのことを好きでいてくれて、その気持ちは一度も心変わりすることもなく、その日から半年後まで続くことになった。つまりそれは、出逢ってから3年半は続いた気持ちだった。少なくとも3年半であって、その後も彼女の気持ちは続いていたのかもしれない。ぼくにはもうそのことを確認する方法がないのだけれど。とにかく、好きになったのは、彼女の方からだった。それだけは、間違いない。
 彼女は、ぼくの11歳年上の社会人で、そして、ぼくはそのとき学生だった。世間のこともよく知らない(いまでもそんなに知っているとは言い難いけれど)、ただの学生だった。彼女は同じ職場で働くスタッフの一人で、彼女はバイトで、ぼくもバイトだった。彼女は看護師とアルバイトを掛け持ちしていて、なんだか忙しそうで、なんだか大人っぽかった。お互いそれなりに気が合ったけれど、告白してきたのはいつも彼女の方だった。いつも、だ。
 付き合ったいきさつと、別れのいきさつはここでは書かないけれど、それはきっと、嫉妬と、性への憧れと、幼さと、結婚と、夢と、いろんなものが混ぜこぜになったものだった。ぼくが思うには、だけれど。情けな過ぎて、今日はここには書きたくない、ってだけだけど。
 いま思えば、彼女はいろんなことを理不尽に感じていたはずだ。離れていく彼女に嫉妬したのはぼくで、憧れは互いにあって、幼かったのは彼女で、結婚と夢はぼくらにはどうにもできないほど、大きなものだった。とにかく、大きかった。
 遠距離では抗いきれないほどに、ぼくたちのこころは離れていって、ぼくたちはぼくたちを失って、ぼくはぼくを喪って、すべては終わってしまったのだった。
 恋愛は、たぶん、素晴らしいものだ。そして、その繋がりがすべてだ。互いに昂め合うことのできるふたりなら、あるいは、きっと。