どんなに高く飛ぶ鳥よりも想像力の羽根は高く飛ぶ

自分の"楽しみ"を書いて、自分だけが救われるんなら、それは言葉ではないんじゃないの。言葉は人のものでもあるんだから。

宇宙の塵と同じ、ほんの些細なこと

 何億光年も遠く離れた惑星から、私たちのいる地球を見通すことができたなら、そこには、まだ、恐竜が映るかもしれない。遠く離れた星に届く光はその距離に比例した古い光である。それを受け取った“彼ら”はそれをどのように見るだろう。

「水のある例の星だ。拡大してみよう」
 誰かが会話している。その星の生物は、人間と違って眼が良いらしい。
「この方向だったな。動体がいるようだ……サイズは? 換算表が必要だ」
 側に立っている一人が慌てて何かを持ってくる。
「全長は100メイトルから1ミリメイトルまで多様性があるな。これが我々の限界であって、これよりも小さい動体もいるのかもしれない」
「大きい動体は他の動体を喰って生きているようだ。互いに生き残るためのサバイバルだな。弱肉強食だ。修羅の世界だな、これは」
 首を振って一人がいうと、もう一人は冷静に応える。
「知的であるとは言い難いようだな。コントロールルームはとても小さいようだ」
 その星の乾いて透き通った大気を通して、地球まで一直線にその視線は注がれている。

「小さい動体は我々の星にいるインセクト()と驚くほど似ているな。起源が同じなのかもしれない……ここからこの水のある星は何億光年も離れているというのに」
 一人は取り乱しているが、もう一人は冷静なようだ。虫のような(・・・)その体を翻して、換算表に目を落としている。
「他の惑星でもあった事例だ。有り得ないことではない」
 それを受けて、慌てていた動体も落ち着きを取り戻したようだ。
光合成体もあるな。適応している。それを食べる動体もあるようだ」
 その動体は、さも美味そうなものを見つけた、という表情で目を細めている。
「しかし、知的な動体がいないことは残念だ」

「この星に知的生命体が生まれるには、さまざまな偶然と時間が必要だろう。我々がこの星にたどり着く頃にどうなっているかは未知数だ。実際に行って観察したいものだ」
 その()は翅をそっとひらくと、フッと浮かび上がりつつ、もう一つの動体に問いかけた。
「我々が行く必要などないだろう。君は行きたいのか? まぁ、それも良いだろう。好きにするといい」
「ただの興味だよ。我々のスケールからいったら、そんなに困難というわけでもない」
 首を振ってから翅を閉じると、その動体は哲学的な目になった。
「これからあの惑星に起こることなんて、ほんの些細なことさ。この宇宙にあるどの星に起こることもそうであるようにね」
「すべては偶然の産物に過ぎないという事か。そんなことに振り回されるわれわれ動体というのも、惨めなものだな」
「知性を持っているからそう感じるだけだ。多くの動体はそんなことも考えず、ただプログラム(本能)のままに生きて死んで、逝くだけさ」
「どちらにしても、惨めさ。我々もね。宇宙の塵と同じさ」
 スッと肩を縮こませて、動体は言う。もう一人が慰めるように応える。
「まぁ、そう言うなよ。吞んでいかないか、うまい酒が手に入ったんだ」