どんなに高く飛ぶ鳥よりも想像力の羽根は高く飛ぶ

自分の"楽しみ"を書いて、自分だけが救われるんなら、それは言葉ではないんじゃないの。言葉は人のものでもあるんだから。

『弱者の戦略』を読んで

 今日、友達とおこなった勉強会で使ったスライドをまとめたものです。
 この本は生物学について書いた本ですが、生物の弱者として生き残る術は、ほかの分野にも応用の効く内容だと思います。ですが、今回は、この本の基本的な部分から抜粋して、まとめています。気になった方は、是非本書をお読みになることをお勧めします。

弱者の戦略 (新潮選書)

弱者の戦略 (新潮選書)

『弱者の戦略』稲垣栄洋著(新潮選書)

はじめに

 強い者「だけ」が生き残っているはずなのに、弱い者も生き残っているのはなぜか? 弱肉強食ではあるが、弱い者が滅びれば、強い者も滅びてしまう。 
→その戦略を紹介した本である。
 弱いことそのものが戦略的な強みであるかのように思える。
 私たちの周りにいる、全ての生き物は、成功者であるという視点。

強さとは?

  • 食物連鎖の視点から考えるなら、弱いのはライオンではないか?

 一羽のタカが食事をするために、1000匹のバッタが必要。
 他の生物に依存して生きてしまっている。

  • 最強の虫は蟻

 集団で襲う。カマキリやキリギリスを運んでいるところを見た事がある人も多いだろう。
 蜂の巣はあり対策がなされている。根元が細くなっていて、蟻の嫌がる物質が塗ってある。

  • 戦国武将の十大紋

 ほとんどが植物でその中には雑草(オモダカ、かたばみ)も含まれている。
 実は雑草は弱い植物である。他の植物がいると生長できないので、他の植物が生えることのできない場所を選んでいる。

強さの視点

  • 食う、食われるの関係

 弱肉強食、依存関係
  →いかに食われないかという工夫

  • 他の生物との競争関係

 種間競争、エサや生息場所の奪い合い

  • 同じ種類の中での覇権争い

 種内競争、エサ場、メスの奪い合い

生物にとっての「強さ」とは、生き残ること。生き残ったものが強い!

食われるものの、食われない戦略

1.群れる

群れる理由

  • 大勢で見る事ができるので、天敵に対する警戒能力を高めることができる。

 草を食べる余裕ができる。首が長く、遠くを見渡せるキリンと、音に敏感なガゼル

  • 自分が襲われるリスクが減る

 多くの動物と行動することで、襲われる確率は少なくなる。

  • 大きな生物に見える

 イワシなど小魚は群れることによって大きな生物に見える。目標を定めにくくするという利点。

  • 食う側は普通は群れないが

 獲物を独り占めしたほうがたくさん食べる事ができるので、普通の肉食動物は群れないが、オオカミは群れる。縄張りを作り広い範囲をカバーしたいから。

2.逃げる

 一匹が食われている間に逃げる。肉食動物のお腹もいっぱいになってくれるかも! (これは群れる利点でもある)

  • ガゼル(逃げるスピード70km/h)とチーター(100km/h)の違い

 ガゼルはジグザグに走ったり、クイックターンして方向転換したりする。最高速では敵わないので、まっすぐに走らない。

  • 蝶のように舞う

 ひらひら舞う事で、天敵であるトリに捕らえられないようにしている。

  • 蛾についている毛

 毛が生えているのはコウモリの超音波を吸収するため、という説もある。超音波を感じると、羽ばたくのをやめて垂直に落下する。

  • 敵を知るための工夫

 ウサギの耳が長いのは音に敏感になるため。ウマやシカは耳を180°動かす事が可能。顔の横に目がついているのは360°見渡すため。

隠れる

  • 小さいということ

 小さいというだけで隠れるのに有利である。「島の法則」によると、島では点滴がいないため、捕食されることはないのでシカやイノシシは小さく、穴に隠れる必要がないのでネズミやウサギは大きくなる。

  • 擬態

──シャクトリムシ、コノハチョウ、コノハムシ
 昆虫の天敵であるトリはとても目が良いので擬態はとても進化した。
──シマウマの縞
 ネコ科の動物は色を感じないため、見えづらい。
  →相手の視点に立つということ。
──カサゴの赤
 深い海には赤い光は届かないため、カサゴは見えなくなる。
──ナマケモノはなぜなぜ怠けるか
 天敵であるジャガーは宇賀かないものを見つけるのが不得意である。
 毒のある植物を食べることでエサにも困りにくい。
──稲とそっくりなタイヌビエ
 田んぼで人に引っこ抜かれないように進化した。
──リトープスは石に似ている
 砂漠にいる植物。動物に食べられないため。
──トケイソウは茎の一部が蝶の卵のよう
 幼生が天敵であるドクチョウは卵がすでに産み付けてあるとそれ以上は産み付けない習性がある。
──カメレオン
 色を変化させて擬態する。様々な色の組み合わせを使うことができる。
──バッタ(緑と褐色のいる理由)
 緑の多いところ、少ないところなど環境によって有利な色が違うので両方存在する。
  →両賭け戦略
    どちらの環境でも繁栄できるように両方を残しておくということ。
──「工業暗化」
 工業化によって白い木が黒くなってしまったが、木の幹の色に合わせて蛾も黒いものが増えた。黒い蛾も元々いた。(両賭け戦略)


 弱い生物は多様な形質を持った子孫をたくさん残すことで、どれかが生き残るようにしている。
 →農薬を撒くと害虫が増えるのは、農薬に対応して進化した害虫が増えるため
 弱い生物は数が多いので、突然変異することで十分生き残っていくことができる。

4.ずらす

敵のいない、場、時間に活動する

  • 夜間行動

 →蛾は夜行性である。蛾の方が先に進化して、そこから蝶が生まれた
  →マツヨイグサカラスウリは蛾に夜間に花粉を運んでもらうように、夜に花を咲かせる

  • 早春に咲く

 小さな花は花粉を運ぶ昆虫にとって目立たないので、早い時期に咲かせる。冬も土の上で葉を茂らせて栄養を蓄えている。

  • ツノの小さなカブトムシ

 大きなカブトムシとの競争に勝てないので、真夜中に活動する。大きなものは早朝に活動する。結果として、中途半端な大きさのツノを持ったカブトムシはあまり存在せず、大きなものと小さなものとの二極化している。

  • ラクダ、ラマ、アルパカ

 天敵の少ない場に適応した。ラクダはこぶに栄養を血液に水を蓄え、砂に対応した長いまつ毛を持ち、鼻の穴を閉じることができる。ラマやアルパカは血中酸素濃度により、効率よく酸素を補強できる仕組みを持っている。

 条件の良いところは競争が激しい。
 それを避けて「ずらす」ということは、少し条件の悪いところへと移るということ。
 弱者にとって、チャンスは恵まれているところにあるのではない。少し条件の悪いところにこそ、チャンスがある。

以上でこのまとめはおしまいだが、本書にはこの「ずらす」ことがこの後たくさん書かれている。興味を持った方は読んでみることをお勧めします。実生活に応用が効くのは、「ずらす」だと思うので。
 わたしがこの本に興味を持ったのは、たぶん、自分のことを弱者だと思ったからだと思う。弱者にとって、良い条件のところを目指すよりも、ニッチを目指すべきというか、目指さざるを得ないと思う。そこを目指すことを拒んだ瞬間に、何かが崩れされるのではないか。そんな気持ちになりました。やっていこう、という感じです。