どんなに高く飛ぶ鳥よりも想像力の羽根は高く飛ぶ

自分の"楽しみ"を書いて、自分だけが救われるんなら、それは言葉ではないんじゃないの。言葉は人のものでもあるんだから。

『弱者の戦略』を読んで その2

 前回(『弱者の戦略』を読んで - 美しい、君に見せなくては。)の続きです。
 昨日、友達とおこなった勉強会で使ったスライドをまとめたものです。

 この本は生物学について書いた本ですが、生物の弱者として生き残る術は、ほかの分野にも応用の効く内容だと思います。ですが、今回は、この本の基本的な部分から抜粋して、まとめています。気になった方は、是非本書をお読みになることをお勧めします。

弱者の戦略 (新潮選書)

弱者の戦略 (新潮選書)

『弱者の戦略』稲垣栄洋著(新潮選書)

前回のおさらい

生物にとっての「強さ」とは、生き残ること
生き残るものが強い

生き残るための戦略として

  1. 群れる
  2. 逃げる
  3. 隠れる
  4. ずらす

というものがある。

それでは本題に入ります。

全ての生き物は勝者である。

この世に存在している全ての生き物は、それぞれの居場所でナンバー1である

 →ナンバー1でないと、生き残ることができない
  ゾウリムシを例にすると、ヒメゾウリムシとゾウリムシを同じ水槽に入れると、ヒメゾウリムシだけが生き残る。
  しかし、ゾウリムシとミドリゾウリムシは共存できる。
   →なぜか? 
     棲む区域と餌が違うから。

「ずらす」ということは、他の生物がナンバー1になれない場所を「探し」、自らがナンバー1になる自分の場所を「探す」こと。

条件を小さく狭く、細かくすれば、ニッチの中でナンバー1になれるチャンスが生まれてくる。

 ジグソーパズルのピースを埋めるように。強い生物は大きいピース(いろんなところで生活することが可能)だけど、弱い生物は小さいピースで入り込める(他の生物が選ばないところを選択しなくてはならない)。

棲み分けという戦略

 激しい競争の末に共存できるところに収束する。
同じ場所でも、時間や食物を分類して生き残る

ナンバー1しか生き残れない。
ナンバー1の条件は「誰にも負けないこと」ではなく
「誰にもできないこと」=オンリー1

弱者は、誰にもできないことをすることで、生き残ることができる、かもしれない。

弱者は「複雑さ」を好む

ランチェスター戦略

 広い平原では兵士の数が多い方が勝ちやすい。しかし、複雑な地形であれば、少ない方にも勝つ可能性が出てくる。切り立った崖や谷や山など。
 →条件を複雑にすることで有利になるチャンスがあるかも

シンプル 複雑
速球を投げるだけの競技 野球というゲーム
ホームラン競争 野球というゲーム

 シンプルな競技では、力の強い方が勝つが、ルールが複雑になると弱いものにも勝つチャンスがある、かもしれない。
 →弱者の戦略

弱者は「変化」を好む

 環境に変化が少ないと強いものが勝つ。
 しかし、変化があると強いものが生きることができるとは限らない。
  →むしろ、ニッチは増えるので、個体数の多い弱い生物が生き残る可能性は残る。(突然変異の可能性が高いため)
 不安定な環境の方が弱者向きであると言えそう。
 大雨・強風・霧のグラウンドでなら草サッカーチームはプロチームに勝てる、かもしれない。

椅子取りゲーム

 生物が絶滅して空いた席を他の生物が埋める。
  →大きな変化によって新たな椅子が開く可能性が増加する。
 変化をずっと求め続け、新たな椅子を狙い続ける生物もいる。
   →開拓者(パイオニアプランツ)としての雑草
      雑草に風で種を移動させるものが多いのはそのため。
 雑草が生えることによって、土を他の植物が生きやすいように耕される。
 日本タンポポを追いやっているのは実は人間である。人間が破壊した土地にしか西洋タンポポは生えることができない(弱いから)ので勘違いされている。日本タンポポがいるところにはそのままでは西洋タンポポは生えることはできない。

植物の戦略 CSR戦略

C→Competiveコンペティブ(競争型)

 →強者の戦略

S→Stress toleranetストレストレラント(ストレス耐性型)

 →生育に不良な環境に耐えることができる。
   例)サボテン、高山植物

R→Ruderalルデラル型(撹乱体制型)

 →予測不能の激しい環境に臨機応変に対応する
   例)雑草

生物の繁殖戦略 rK戦略

rN(1-N/K) = 個体群増加速度

N:個体数
r:増加率 
K:環境収容力(環境によって生存できる生物の最大値)

r→卵や子をたくさん産む、繁殖のスピードを早めてなんども産むことで増える
K→環境による

Kの値いっぱいまで生存率を高める→強い個体
rを高めようとこの数を増やすと一個あたりの卵や子は小さく弱くなる
生存率を高めるために大きくすると少なくなる。親が守ったりすると、面倒を見られる数は限られる。次の繁殖もできない。
r↑ならK↓、K↑ならrは犠牲に

r戦略「弱くても小さな卵をたくさん産む」
(→食われる生物に多い)
K戦略「強くて大きな卵を少し産む」
(→敵が少ない生物に多い)
の二者択一になる。

食う食われるでなく、競争関係にあるとすると

 初めはrが増えるが、体の大きいKが最後には圧倒する。

K同士なら

 力のある方が生き残る→強者に有利

不安定な環境なら

 rの方が有利→個体数が多いから

環境によってrとKを使い分ける生物もいる
 →季節によって卵のサイズを変えるなど

Rとrが偶然にも弱者の戦略

 どちらも「多様性」と「スピード」重視。
寿命が短く、命のサイクルを短く早く廻していくことで突然変異を繰り返す。
 それは環境に適応していくためである。
   例)何千年も生きる木は強い。雑草は一年かもっと短い周期で枯れてしまう。だからこそ、環境に対応して生き延びることができる。
 本当に強いのは、樹木なのだろうか、雑草なのだろうか? 


 以上です。本の内容はあと1回分ありますが、それをまとめるかは未定です。

 私がこの本に興味を持ったのは、私が自分のことを弱者だと思っているからだ、と前回書いたけれど、やはり自分の中に弱者として生きるための「知恵」のようなものを汲み取ろうとしている節がある。よく言われるニッチを目指す、極端を目指すところに弱者の戦略がある、というのが腑に落ちた感じ。ランチェスター戦略は営業などでも使える手だろうと思う。我々が生きるべくはニッチである。そのことをわきまえる、いいきっかけとなったと思う。