風に吹かれて
音楽については、音楽をもってしか”正しく”語り得ない
本については、本をもって
言葉については、言葉をもって
愛については、愛をもって
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人は、人を愛することも、憎むことも、安易である
安易だ、という意味は、コントロールできないということ
そうしてしまうべき何かのエピソードがありさえすれば、あとは自動なのである
好きになることも、そうしないことも、”簡単”だ、と
そこには意図が入り込む余地などない
人はそういう自分の自動さに、時に惑わされる
自分自身の振る舞いにも、他人の自動さにも
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好きだった人を、まったく逆に思ってしまうことについて
ぼくの中にいくばくかの悲しさが生まれる
なにかのボタンを掛け違っていたら
まったくべつの結末を迎えていたかもしれない人
いかなる振る舞いにも、自分自身は現れている
その人の振る舞いは、きっと偽りなくその人なのだ
そう思う
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風については、風をもってしか”正しく”語り得ない
風吹けば、桶屋が。
風吹けば、恋。
きょうも、風が吹いている
(了)