あなたがぼくの現実であるということ
あなたに、ぼくの現実と成って欲しい。あなたを幸せにしようと、ぼくは思っていたい。思い続けていたい。あなたでなくてはならない。あなた以外に、現実なんてない。ただ、ただ、あなたとあなたから産まれてくる小さな人たちを、幸せにしていたい。小さな人たちが大きくなることを、ぼくはよろこびとするだろう。そういった類の現実を、ぼくに、持たせて欲しい。
あなたはあなたとして生きていけるだろう。きっと、幸せに。ぼくの現実になんてならなくたって、幸せになれるだろう。でも、ぼくにはあなたでなくてはならないんだ。そう思い込んでしまっているだけなのかもしれない。でも、そう思い込める人なんて、そう滅多にいやしないとも、わかっている。
現実は、いつだって、男には厳しいものだ。女の人という現実は、いつだって、ぼくに突き刺さってくる。たぶん、どんなにお金を稼いだとしても、そういうものなんだろう。どんなに優しい人にとったって、そうなんだろう。ぼくなんか、なんて自分を卑下したって仕方ないんだけど、やっぱり、ぼくにはそれは難しいことなんだ。どうしようもなく困難なことなんだ。
ずっと、そういう現実から逃げていたような気がしている。ずっと、ずっと、逃げていたいような気がしている。
こんな風に、身体の中からエナジィが湧いてくることなんて、そうはない。あなたは、そんな人だった。
自分を誤魔化していたって、自分がつらいだけなんだ。どうやって、きみを手繰り寄せたらいいのかわからないでいる。きみに関するどんなことだって、ぼくは勇気を出せる。なにかを為せる。
きみという現実こそが、ぼくを成長させるだろう。きみを幸せにするという現実。それに関する意地と見栄が、ぼくをなんとか持ちこたえさせるだろう。どんどん前に進むために、きみをぼくは求めている。活き活きと生きるために、ぼくはきみを求めている。
現実の中に、自分を生かすために、活かすために。
きみに応えるために、ぼくは両親から産まれてきたような気さえしてる。
ぼくの親の世代も、その前も、生物が発生したときから、ずっとそうだったんだ。誰かが誰かの期待に応えてきた。誰かが誰かの現実と成っていた。誰かが誰かを生かしていた。誰かが誰かを活かしていた。
だから、きみにも応えて欲しい。
そうやって、“現実”はできているんだ、この“世界”はできているんだって、この歳になってやっとわかった。世界の秘密に触れた気がした。