条文読み方こと始め
友達とやった勉強会のまとめです。
法律に限らず、契約書などの文面がどのような構造になっているのか、どのような言葉で書かれているのか、その特徴的な部分について焦点を当てています。
できる限り、条文などの”とっつきにくさ””苦手意識”を緩和することを目的としています。
それに加えて、条文などでしか使わない言葉の用法があるのでそれを楽しみつつ、まとめてみました。
ただし、自分の興味・関心の範囲でのまとめであり、私なりの解釈を以て書いておりますので、実際に法律などを読む参考にはならないかと思います。興味を持った方は、書籍を読まれるとよろしいかと。
条文の構造
(編)> 章 > 節 > 款(かん)> 目
という構造になっていることが多い。編はない場合もある。
第一章──目的規定、定義規定など、法律全体に関する総則的な内容
それ以降は
実体的→
雑則的(主務大臣の権限の委任とか)→
罰則
と続くのが基本形
本則と附則
本則が「主」、附則が「従」が基本
本則が理想的であるのに対して、附則は理想の通りにいかないので対応を書く。理想と現実をつなぐ役割を持つ。
→まず施行期日や適応区分など。そして、経過措置、本則の特則、他法改正、検討事項など。
条文で使う言葉の微妙さ
①「及び」「並びに」「かつ」
「かつ」は「並びに」より大きい意味の接続する。
形容詞句を強く結びつける
公正かつ自由
要件をともに満たさなければならないことを表すとき
文書をもって行い、かつ、理由を付して
②「又は」「若しくは」
③「その他」「その他の」
「その他」
並列
聞き込み、尾行、張り込みその他これらに類する方法により、……。
「その他」の前と後は同じ。
「その他の」
例示
栄養士、歯科衛生士その他の職員に、……。
「その他の」の前は後の例である。
④「係る」「関する」
「係る」
直接的
介護休業申出に係る対象家族が、……。
→「介護休業申出の対象となっているその対象家族」という意味
「関する」
より緩やかな、やや広い
フロン類の排出の抑制に関する事項について
- 環境に負荷をかけない代替フロンの開発
- フロン類の回収及び破壊の促進に関する教育及び学習の振興並びに広報活動
など長期的なあるいはやや周辺的な事項までカバーすることを示す。
⑤「場合」「とき」「時(じ)」
「場合」「とき」
仮定条件を表す。時点や時間を表すものではない
投票管理者は、国民の投票権を有しなくなったときは、その職を失う。
読み易さ、語呂、語感に応じ「場合」「とき」を選択する。
二つの条件を重ねる時は「場合」→「とき」の順に使う。
「時(じ)」
ある時点を瞬間的にとらえて押さえる場合に用いる。
所轄庁に対する清算結了の届出の時において、……。
読み上げる際に混乱を招くので、漢字の「時」は「じ」と読む。
⑥「者」「物」「もの」
「者」
──法律上の人格を有するもの
「物」
──権利の目的となる、外界の一部を構成する物件を指す。
「もの」
1.抽象的なもの
前三号に掲げるもののほか、……。
2.あるものにさらに要件を加えて限定する場合
自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、……、医学的知見に基づき行う診断が一致しているものをいう。
3.人格のない社団または財団を指す場合
⑦「以前」「前」「以後」「後」
「以前」「前」「以後」「後」
『以』は起点を含む。「前」「後」には起点は含まれない。
→時間的な広がりを持たせた法令でどこを基準にするかが問題になる場合重要になる。
「以上」「超」「超える」
「以下」「未満」「満たない」
数量・期間についても同じ
⑧「遅滞なく」「直ちに」「速やかに」
「遅滞なく」
時間的即時性が弱い
→正当なあるいは合理的な理由に基づく遅れは許される。
「直ちに」
時間的即時性が強い
→一切の地帯が許されない。
何らの条件もつけないでという意味でも使われる。
「速やかに」
「遅滞なく」<「速やかに」<「直ちに」
→上二つでは、義務違反になるが、「速やかに」は訓示的な意味合いが強い
⑨「する」「とする」「ものとする」「しなければならない」
「する」
法規範の内容に創設的な意味を持たせようとする場合
……その所有権を取得する。
→法律効果が認められることを規定している。
「とする」
1.法規範の内容に、創設的であるとともに、拘束的な意味を持たせようとする場合
2.変更適応の規定の中で寛容的に用いられる。
同項中「二年」とあるのは「一年」とする。
3.「同様とする」「例とする」
などの慣例的な使い方。
「ものとする」
1.一定の義務付けを「しなければならない」よりも弱いニュアンスで、とりわけ行政機関に対して義務付けをするとき
基本方針を定めるものとする。
2.物事の原則を示そうとするとき
数個の事件は、左の場合に関連するものとする。
3.解釈上の疑義を避けるために、当然のことを念のために規定するものであることを表そうとするとき
刑法第三十五条の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であつて前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適応があるものとする。
4.ある事項に関する規定を他の類似する事項について当てはめる
「総株主」と「株主は」とあるのは、「株主は」と読み替えるものとする。
「しなければならない」
国民や行政機関に対して一定の作為を義務付けようとするときに使う。
⑩「……してはならない」「……することができない」
「……してはならない」
一定の行為の禁止。
不作為の義務を課す。
「……することができない」
ある行為をする法律上の能力や権利がないことを表す。
女は、十六歳にならなければ婚姻をすることができない。
⑪「この限りでない」「妨げない」
「この限りでない」
「ただし、……この限りではない。」
→特定の場合に除外する。
「妨げない(妨げるものではない)」
ある事項に関して規定が設けられることによって、その事項に関する別の規定や制度が引き続き適用されるのか否かといった点に疑義が残る場合に、その別の規定などの適用が排除されるものではないと示す。
→「この限りでない」は”not”というだけだが、重複がある。
⑫「ただし」「この場合おいて」
「ただし」
例外や制限を規定
→「ただし文」という。
「この場合において」
追加や補足的な内容
両方とも、一つの「項」や「号」の中に二つの文章があるときのつなぎの文章として使う。