どんなに高く飛ぶ鳥よりも想像力の羽根は高く飛ぶ

自分の"楽しみ"を書いて、自分だけが救われるんなら、それは言葉ではないんじゃないの。言葉は人のものでもあるんだから。

掌編

今日もどこかで雲が雨を降らせている

今日もどこかで雲が雨を降らせている。 雨なんて降る予報ではなかったのに、いつの間にかその予報も変わって、実際に雨が降っている。そうやって、天気に翻弄される人間がこの世界に一定数いて、そうやってまた、あぁと思っているのだろう。そのあぁ、には、…

ぼくにあいた穴

君からの帰り道に、ふと、星をみつけた。 星なんてどこにでもあるなんて、ときどき思う。人だって、どこにだっていると思っていた。でも、そんなことはないって、やっぱり思う。自分が万全の態勢を整えていたって、昼間に見ようと思ったら、星はまぁ、見えな…

世界をこしらえるということ

どんな世界も、自分にぴったりとしない。どこまでも自分に都合の良い世界なんてない。どこにもない。かと言って、うまく生きることができないというわけでもないんだろう。多くの人にとってはね。自分には、難しい。 難しいと思い込んでいるだけで、そうでも…

女子のチョコレート讃歌

「はい、コレ」 華子がとうとつにチョコの箱を渡してきた。 「なぁに? どうしたの」 「なんでもないよ、ただあげたくなったから」 「ありがと? これ、わたし好きなの!」 最近はとても疲れていて、何かとしんどかった。こうして優しさを手渡してくれる人が…

再会と落涙

「ただ、会ったというだけで、涙を流してくれる人がこの世界にいると分かっただけでも、ボクはうれしいよ。生きていてよかったよ」 そのまま彼女はこちらを見ることもせずに泣いたままだった。ぼくは続けた。 「だから、泣くのをやめて? 笑顔を見せて。久し…

雨のにおいと傘

雨なんて降っても、休めるわけでもないのに、こうして雨の匂いがするとなんだかうれしい。学生時代の部活で、雨が降ると練習が楽になるのを体が覚えているのかもしれない。 どちらにしても、いい匂いでわたしは好きだ。この匂い。梅雨のこの時期の匂いって感…

どこにでもいる僕たちなのに

「なんでこんなことすんの!」 「別にー、理由なんてないよ」 「はァ?」 こんなに怒られては、とても怒った顔を見てみたかったから、なんて言えない。居心地が悪いまま、ぼくは笑顔をうすら浮かべている。どこにでもいる僕たち。 「もう、次やったら怒るか…

生きる その百八番目のし

いつも消化できない、書ききれないなにかを抱えている たまに書いても、どうにもまとまらず、人の目に触れることも、その必要もないものが出来上がる この世界の、人の目に触れているもの、そうなるべきもの 自分自身にさえ、わたしはそれを躊躇してしまう …

したの味

マスクごしの接吻。 彼女が舌を当てているのがわかる。わたしもそうしている。張り合うマスク。ゴムで耳が痛くなるくらい、キスしている。 息が荒くなっているのは、気密のせいなのか。ぼくらは、いま、野生。どうしても、こうしなくてはならない。 眼鏡が曇…

愛されているの、に

愛されていることを知っている そういう人がときどきわたしの前に現れては通り過ぎていく ときどき留まる人もある わたしを産んだ人は、寄り添ってくれる わたしは時にそれを拒み、時に受け入れてきた 愛されていることを知っている なぜ、その人がわたしを…

彼女は、胸を張って、

うまれてはじめて、人を好きになった わたしは、その人と会えなくなったことをうらめしく思った さまざまな困難に及んで、わたしは死んでいいと思った でも、それはわたしの気やすめの気まぐれでしかなかった 生をおろそかにすることを、彼女はとても悲しむ…

あえないはなし

【ぼーいの】 美味しいものを食べようとするたびに、あなたとこれを食べられたらいいのに、と思う。 良い音楽を聴くたびに、あなたはこれを聴いてどう思うのか、問いたい気持ちを抑えられない。 お気に入りの映画が増えるたびに、君とこの気持ちを同じ時間・…

贈ることのない恋文

何を書いたらあなたを楽しませることができるだろうかと考えて、あなたの楽しみのツボみたいなこと、あんまりよく知らないことに気が付きました。人格としてのあなたを好きだけれど、あなたの嗜好だとか、何を楽しいと思うのだろうとか、そういうことにはず…

プレイリスト:ReWrite

「じゃあ、次はこの曲、きいて」 「ん」 彼はあくまで素っ気なくわたしからイヤフォンを受け取る。自分の好きな曲を彼に聴いてほしくって、こうして肩をならべてコーヒーショップに座っている。彼に聴いてほしい曲は耳を通さなくてもどんな音なのかはもちろ…

あなたがぼくの現実であるということ

あなたに、ぼくの現実と成って欲しい。あなたを幸せにしようと、ぼくは思っていたい。思い続けていたい。あなたでなくてはならない。あなた以外に、現実なんてない。ただ、ただ、あなたとあなたから産まれてくる小さな人たちを、幸せにしていたい。小さな人…

プレイリスト

「じゃあ、次はこの曲、きいて」 「ん」 彼はあくまで素っ気なく女の子からイヤフォンを受け取る。女の子は自分の好きな曲を彼にきいてほしくって、こうして肩をならべて喫茶店に座っている。彼にきいてほしい曲は耳を通さなくてもどんな音なのかはもちろん…

目のさよなら

どの瞬間が、その子と目の合った最後だったのか、思い出すことのかなわない別離。 どんなに素敵だと思っていても、それを口にしなくては、伝わらない。今は目の前にいたとしても、いつかはいなくなってしまう。 その子が目の前からいなくなったら、思うだろ…

自分を幸せにしようとすること

ひとはふつう、自分を幸せにしようとするものなのか なんとなく なんとなく はしっていたけど やっぱりそうなのか だから、幸せにしてもらっているひとを見ると複雑な気持ちになっていたのか そんなこと、当たり前のことなのかもしれない でも、なんだか、そ…

老後の鼎談

その、写真に収められた彼女の笑顔が輝いているのは、彼女を撮っているあいつのことを見つめているから。あるいは、目だけではなくこころで。 人を思う気持ちは、簡単にわかってしまう。だけど、当の本人にはわかっていなかったりする。彼女が、こんな顔をす…

最期の床にて

あなたと出会ったとき、今までぼくに起こったすべて、ぼくが考えたすべて、そして行動したことのすべての訳がわかった。 なにもかものすべては君と出会う為だったのだ。 高三の夏にふとジャズのCDを買ったことも、大学生のときに本屋で働き始めたことも。 一…

どぶねずみに捧げる詩

自分のことをよく知らない人にどう思われようと気にしないのは、 あなたが強いからではなくて、 自分の弱さをさえ、知ろうとはしないから。 自分自身を知ろうとしない人のことを、 他人には知りようもないのです。 他人はあなたのことを、解釈したいように勝…

ひとがなにかを得るということ

「あなたは本を読み過ぎて 頭の中も 身体の中も “知恵”や“知識”でいっぱいね」 「でも、そこに、あなたの 頭や身体を通した“経験”はほとんどないでしょう」 「実際にやることと、できること、やれるつもりでいることは 違うのよ」 「やったらできるかもしれ…

やっぱり、あれは神様だった。

来たことのある場所 嗅いだことのある香り 眩んだことのある光 触れたことのある心持ち それを経験したはずなんてないのに なんだかそう感じてしまうこと 初めて恋に落ちたとき それが初めてではないことを、ぼくは知ってた こういう気持ちになったことが以…

持っている人と持っていない人の恋のこばなし

ぼくの彼女は携帯電話を持っていない。「スマホ」ではなくて、「携帯電話」を、だ。別にファラデーとかマクスウェルに恨みを持っている、とかなんかそんなことでもなくて、単純に携帯電話が必要ないらしい。高校生の間だけは成り行きで親に持たされていたら…

バス停

道を歩いていて、ふと、思った。 このバス停は、どこにつながっているのだろう。 きっとどこかにつながっていて、乗った人をどこかへ連れて行ってくれる。 運賃はたったの数百円で、そんなに不快なこともなく、外の変わりゆく景色をただ眺めていられる。 無…

予告編

知らない人と、映画の予告編を観ている。 わたしたちは、ここにこうしている必要もないし、 それを観ている必要もない。 だけれど、ふたり並んで観ている。 なんだか、この予告編を観なければならないような気がしている。 それも、その人と一緒でなくともよ…

えんむすび

年頃の娘が縁結びの神社巡りに熱心になっている。 縁なんて、どうせ交通事故みたいなものでしかない。出会った瞬間に出たとこ勝負で見極めて、飽きないうちにくっついてしまうのが一番いい。そこから先はいかに諦めるかなんだ、なんて口が裂けても娘には言え…

ここがほんや

「ほら、ここだよ、前に行ってみたいって言ってたでしょう?」 親戚から預かることになったこの人をいろいろと案内して周っていると、何だか変な気持ちになったりする。 「ええと、何でしたっけ? 情報がたくさんあるところ」 「そう。本屋。オールドスタイ…

“それ”に含まれうるもの

一編の詩を書くのに どのくらいの言葉が含まれているだろう 本なら何冊ぶんだろう 人生なら何生ぶんだろう 一つのお話をつくるのならどうか 何百層にも複雑に重なりあった 言葉や意味や概念や、あるいは誰にも知覚されることのないなにか そういうものが、一…

空の青さをみつめていると、

空の青をみつめて、思い浮かべること それは、 懐かしいということでもなく、 怯えるということでもなく、 ただ、気分が軽くなるというだけでもなく 青空と向き合うとき、吸い込まれていくわたしの中のなにか それが吸い込まれるたびに、わたしは絶望する 青…