どんなに高く飛ぶ鳥よりも想像力の羽根は高く飛ぶ

自分の"楽しみ"を書いて、自分だけが救われるんなら、それは言葉ではないんじゃないの。言葉は人のものでもあるんだから。

掌編

女のいのち

ぼくの隣で、ぼくの彼女が泣いている。さめざめと、泣いている。三面鏡の前で。たぶんこの鏡は、彼女の家族から受け継いだものだろう。 ぼくたちは、愛しているし、愛されている。だから彼女はこうしてぼくに気を許して泣くのだと思う。だから、と書いたけれ…

おたまじゃくしの香り

精液の匂いなんて嗅いだことがないはずなのに、わたしには、なぜかその香りが精子の匂いだとわかったのだった。それが生死の匂いだったからかもしれない。我々は、全部、“そこ”から始まり、そして、性交のたびにわたしたちは小さく死んでいる。 窓ガラスに雨…

ぜんぶ、春のせい

君に別れが来てしまって、そして、ぼくに出会いが来るのは、 自転車を2人乗りするのが気持ちイイのは、 なんだか汗ばむのが気になるのに服を脱げないのは、 一緒に映画を観て映画の感想なんて言わずに、ただお茶しているのは、 今日は親居ないから、って君が…

宇宙の塵と同じ、ほんの些細なこと

何億光年も遠く離れた惑星から、私たちのいる地球を見通すことができたなら、そこには、まだ、恐竜が映るかもしれない。遠く離れた星に届く光はその距離に比例した古い光である。それを受け取った“彼ら”はそれをどのように見るだろう。「水のある例の星だ。…

奮闘するおとこ

「書きたいんでしょう、書くべきだ」 「この前の話、あれ、面白かったじゃないですか。読みたいので書いて下さい。お願いします」 向こうにいるはずの“書き手”である誰か、は此処からは見えず、声は聞こえない。ただ、一人の声だけがこの部屋に響いている。 …

声で、叫んでる

どうしようもなく愛されたくてしかたなくて 愛されてるつもりで、でも、愛されてなくて 大人になったつもりで、でもそうでもなくて ずっと子供のまんまで、成長していなくて ずっと、このままでいいやって 笑わせたくて、人を楽しませたくて、でも、なんか、…

恋愛とは、(たぶん)素晴らしいものだ

彼女は、そのとき、ぼくのことを理不尽だ、と思っていたかもしれない。いま思えば、だけれど。彼女がぼくから遠ざかろうとした途端に、ぼくは近づきたい、と思ったのだから。彼女は決して狙ってそうしたわけではないし、ぼくの方も全くの不可抗力というやつ…

月を歩くひと

「昨日、月を歩く人を見たぞ」 もう呆けてしまった父が言う。 「月に!? どんな人? なにしてた?」 5歳になる息子が驚いて応じる。 「どうやって? 月なんて小さくて見えないでしょ」 私は冷静にツッコむ。 「隣町の天文台の望遠鏡で見た。あれは確かに人…

王蟲とのひとり、やりとり

目が醒めると、眼前に王蟲がいた。 王蟲は雄大で、清らかで、ただそこにいるだけなのに、わたしは気圧された。その多眼は暗いが、雄弁に語り、生気を失っているわけでもなく、今にも明るさを取り戻しそうだった。 わたしは王蟲の前に立ち尽くし、見上げてい…

気球から撒きうるもの

「なんでこんなことになったのぉ〜!」 女の子と気球に乗っている。空を飛んでる。女の子が叫んでる。ボクだって怖いのだけど、かっこ悪いので押し隠してる。平然としているフリ(・・)をしている。ホントは、ドキドキしてる。彼女が叫ぶ通り、なんでこんなこ…

山路を登りながら、こう考えた

男にフラれて旅に出るなんて、我ながらアリキタリだ。でも、あの男との記憶がたくさんあるあの家に居続けるのはなんだかつらくて、私はちょっとした休暇をとって、こうして外に出てきたのだった。これは、旅なのか。 どこか街に行くのも嫌だったし、海外に行…

鳩と猫(女の子に勧めてる男の子 を改題)

「おれが思うに、きみはこういう漫画を求めているはず」 「いや、いいよ、読むのめんどう」 彼女は普段から化粧もしない、服にも拘らない、ネイルなんてしたことがないはず。そういうことに、きっと興味がない。 「あたしのなに知ってんのよ?」 「いや、わ…

電話で、好きな人に告白するに当たっての、memo

・同じ気持ちかどうかどうやって確認する? ・彼は私のこと好きなんだろーか? ・説得とかそういうことじゃない ・電話してる時点で感づいてるはず ・気まずい雰囲気を作らないように注意! ・無理だと思ったら、ごめんって言って切る。すぐ切る ・そうなっ…

女の子に勧めてる男の子

「このマンガ面白いよ、読んでみ」「ふーん、『G戦場ヘヴンズドア』? 聞いたことない。バトル漫画?」「いや、漫画家マンガ」「ふーん」 「漫画家が題材だけど、漫画内マンガはほとんどないんだよ。たぶん一コマだけ。そのコマでメインキャラクターの言いた…

失ってはいけないもの

──あたしだけは、あんたの書いたものを読んだぞ、認めたぞ、という心持ちで「いいね」した。 *** 心をどう持とうとも、たぶんこの気持ちは、コンピューターを通してでは伝わっていない。相手がどう受け取ったかは永遠にわからない。そこには表情も、仕草…

生きねば

肺に入ってくる空気は少なく感じられ 横隔膜は今日も緩い しばらくは 走れないだろう 体力はきっと落ちていて またすべてやり直しだという気の重さ 考えることもあるけれど なんとかなることは なんとかなるし なんともならないことは なんともならない 精魂…

わたしの好きな人が、

わたしの好きな人が、この先のつらい思いをしませんように。苦労したとしても、それを乗り越えられますように。その勇気を与えてくれる人が、なるべくそばにいますように。なるべくいい気分で過ごせますように。しんどい時があっても、夜の星を眺めたなら、…

春の空の眺め

いい気候になると、夜の宙を眺めたくなる。冬の空の方が、空気が澄んでいるらしいから、遠くまで見えて、宙の星もきれいに見えるんだけど、ぼくは、暖かくなった春の宙を見るのが好きだ。こうしている間、人の世の悩み事を考えなくて済む。寒い時には、身体…

好きでないと思ってたけど、やっぱ、好きだった、ごめん

人の気持ちは外から見えない。相手が自分のことをどう思っているかなんて、ほとんどわからないことだ。そんなそぶりを見せても、そうでもないこともあるし、なにか理性で覆って本心を隠すことだってある。単に恥ずかしいってこともあるし、それが恋の場合、…

心音を聴き、心根を育てる

どんな人にも独りのときはあるけれど、きみの心根(こころね)のところにきちんと栄養と水をやっておくんだ。心根はあなたの本性だよ。芯なんだ。それが腐ってしまったら、きみはきっと、壊れてしまう。だけど、それをきちんと育てたら、きっと良いことがある…

この盃、かわしておくれ。

みんないつかは退場する。 きみがいなくなったなら、ボクはまだ一人のままだろう。 きみがいても、ボクが一人でなくなるわけではないけれど、 なんとなく、寂しくはある。 きみは旅立つのだ 大人から、壮年、老年となって やがて退場するときまで、どうか幸…

ブログこと始め

おとなが忘れてしまったこと、子供がまだ知らないこと。 というブログを書いていました。blogspotのブログは残しておくつもりですが、記事を移したりはしません。 以前もはてなブログ様を利用していたのですが、またこちらで書いていくつもりです。はてなア…